第3章 夏祭り
穴場というだけあって、境内の人影はまばらだった。
3人はお参りをしてから、社の端に腰掛けた。
桜を真ん中にして、2人は両脇に座る。
するとまもなくドーンという大きな音と共に花火が打ち上げられる。
色とりどりの大輪が夜空に花を咲かせる。
「わぁーきれー」
桜は空を見上げて無邪気に声をあげた。
「おーマジきれーだな!花火なんて久しぶりだぜ」
高尾もつられて声をあげる。
そんな2人とは対照的に、緑間は黙って空を見上げていた。
「あ!ハートの形した!」
「おー最近の花火はすっげーな」
楽しげに感想を言い合う2人をちらりとみやると、ふと緑間は桜だけを見た。
空を見上げ、花火が打ちあがるたびに表情をころころと変える桜。
花火に夢中で、視線に気づかない桜を、緑間はずっと見つめていた。