第3章 夏祭り
金魚すくいの屋台の前で、桜は座り込んでじっと水面を見つめていた。
「なつかしー昔はよくやったもんだぜ」
高尾も桜の隣に座って覗き込んだ。
緑間は、一歩後ろで立ったまま見ていたが、
「ね、緑間君も近くで見なよ」
と、手を掴まれて隣に座るはめになった。
仕方なく水面を見ると、小さな赤い金魚が所狭しと泳いでいる。
「可愛いね、金魚」
と、緑間に向かって笑顔で言う桜。
間近で見る桜の笑顔はあまりにまぶしくて、緑間はふいに立ち上がった。
高尾は、そんな緑間の心情を察し、
「しゃーねーなー真ちゃんは・・・」とこぼす。
「え・・・緑間君・・・?・・・私・・・嫌われてるのかな・・・」
ふり向いて緑間を見た桜だが、再び水面に視線を落とすとそう呟いた。
「桜ちゃん、気にすんなって。真ちゃんは女の子に免疫無いだけだから」
そう言ってみたが、桜の顔は曇ったままだった。
「高尾!余計なことを言うのではないのだよ!」
慌てた緑間が後ろから声を張り上げた。
「ま、とりあえずそろそろ花火が始まるんじゃね?境内の方に行こうぜ。穴場らしいぜ」
高尾は桜を促すと、3人は参道を歩いて社の方に向かった。