第3章 夏祭り
民宿の玄関先には、高尾と緑間の姿があった。
にこにこと笑う高尾に対して、緑間は不機嫌だった。
「高尾、いつまでここに居させる気なのだよ」
理由も分からず高尾につかまっていたらしく、明らかに苛立っている。
「まぁまぁ、真ちゃん。もう少し待てって。それにしてもちょっと遅せーな・・・」
慌てて緑間をなだめるも、
「いい加減にしろ高尾。部屋に戻るのだよ」
と高尾の制止を振り切り玄関に向かおうとした時、カラカラと乾いた音が近づいてきた。
「ごめんなさい高尾君。お待たせしました!」
「おーちょうど良かった。真ちゃん待ちくたびれて・・・って」
小走りに近づいてくる桜の姿を見て高尾は驚きの声を上げた。
「うは!どうしたのその浴衣!ちょー可愛い!!」
緑間を押しのけ、桜の前に立つ高尾。その後ろで、緑間は直立不動で桜に見入っていた。
「女将さんが着せてくれたんです。恥ずかしいから遠慮したんですけど・・・」
「いや、良いって!似合ってる!!な、真ちゃん!」
そう言ってふいに振り向いた高尾に慌てる緑間。
「・・・悪くないのだよ・・・」
そっぽを向いてぼそぼそと呟く緑間。
「あれ、可愛いって言ってるのと同じだぜ?きっと」
高尾は桜の耳元で囁いた。
「高尾!!聞こえているのだよ!余計なことを言うのではないのだよ!!」
少しだけ頬が赤く見える緑間を見て、桜は微笑んだ。
「じゃ、行くとすっか!今日はしっかり俺らがガードすっからさ!」
そう言って、桜の前に元気良く手を出す高尾。
「はい!」
桜は、笑顔でその手を取った。
「ほら、真ちゃんも!!」
高尾に促されてそっぽを向きながら手を差し出す緑間。
桜の手が触れた瞬間、緑間の心臓が跳ね上がったのは言うまでもない。