第1章 不意打ち【影菅】
なんとはなしに外に出た。
ドアの隙間から漏れ出した冷気に手が竦む。
息は白かった。
ピンと張り詰めて、ひとつ物音でもたてれば何かが零れ落ちてしまいそうな空気。
のそのそと、悴む手足で歩き出した。
実力で勝ち取らなきゃ意味がない。お情けでコートに立つなんて格好悪いのは、ごめんだ。
なんて、名脇役みたいな言葉を並べてみたけど。
やっぱさ、悔しいよ。
今年入学して来た1年生は、皆期待できる奴らばっかりだ。
強力なバネとスタミナで身長による差を補って余りある日向。
他を圧倒するタッパに冷静沈着な観察眼。性格に難ありだけど、その辺は追い追い。
山口は、周りが化け物ばかりで目立たないけど、そんな中弱ってるところを他に見せない強さがある。絶対伸びるぞ、あいつ。
そしてー
コート上の王様...って呼んじゃいけないんだっけ。
サーブ、レシーブ、スパイク全てにおいて隙がなく、そして何より、天才的なセットアップ。
ーー影山、飛雄。