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【ハイキュー!!】君と僕が【腐向け】

第3章 紅月【クロ月】


「寒いな」







ふと呟いた彼は、わざとらしく体を竦める。



そうですねと、思ってもいないことに相槌をうった。
そもそも僕は上着を着ているのだし、あなたが寒いのは、その薄着のせいだろう。






「もう戻ります。寒い、ですから」






そう嘘をはいて手すりから離れて、月を映し出すガラス戸に手を掛ける。








「なあ、」







背後からの呼び声に、ざわざわとまた胸のあたりがざわめく。



音をさせずに振り返った。











「君を連れ去ってしまおうか」









闇に包まれた月に恭しく手を差し伸べて。






「今宵は月も隠れてしまうから、誰にも見つかりはしないだろう」






演技じみた声でそう言った。




眼鏡のフレームにこの場だけ切り取られたような、まるでこの台詞のためだけに整えられた舞台。


美しかった。


観客はひとりだけ。
この声も、言葉も、自分だけのものだった。





「あれえ?もしかして見惚れちゃった?」



ニヨニヨとこちらを挑発的に見つめる視線。




「自惚れですよ、それは」




「そっか」




喉で笑うその顔は何故か嬉しそうだ。



「それは残念」



思ってもいないくせに。



悪態をつきながら黒尾の横顔を盗み見る。

やっぱり、綺麗だ。

死んでも口になんて出さないが。





「まあでも、あんなクサい台詞、似合うのは貴方くらいですよ」



吐き捨てて再びとに手を掛ける。






ふっと、背後で笑う声が聞こえた。












END


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