第2章 【銀魂】偽りの華
棗は潤んだ瞳を沖田に向けた。
「総悟…」
沖田はちっと舌打ちした。
「棗!俺はお前に惚れてるんでィ!お前も俺に惚れてるんだろ⁉それでいいじゃねェか!」
その言葉に、棗は目を見開いた。
その瞳からは涙がこぼれ落ちた。
「総悟ぉ!」
棗は土方の手を振り払い、沖田へと駆け寄った。
沖田は棗を抱きとめると、強く抱きしめた。
「もう…どこにもいかねェでくだせェ」
沖田が絞り出すように言った。
「…はい」
「…させるかよ!」
土方は抱き合っている二人に向けて刀を振り下ろした。
沖田はそれに気づくと、棗を背中に庇うようにして土方の刀を受け止めた。
そして素早い動きで間合いを詰めると、土方の腹部を刀で突いた。
「…ぐっ…!」
「…不意打ちでもなきゃあ土方さんに俺は殺せねェぜ」
その後、駆けつけた真選組によって土方は捕らえられ、今は牢屋の中らしい。
あの人は何を思ってこんな事をしたのだろうか。
虚しいだけの、偽りの愛で。
「あー、久々に棗が作ったプリンが食べたいでさァ」
「…じゃあ、沢山作るね。今までの分も…これからも」
これからの二人の道は、決して優しいものではないかもしれない。
それでも…
雲ひとつない青空の下で、二人の繋がれた手が離れることはなかった。