砂糖入りの紅茶より甘い日々を 諸星さんお誕生日作品
第1章 とある日のミカエリス家
「さて、そろそろ…夕食の時間では?」
あまりにも幸せ過ぎて時間が過ぎるのを忘れてしまっていた
夕食の支度をしなければならないが時間はとうに8時を回っていた
これではろくなものができないかもしれないと考えていた時
「さぁ、お姫様。私がパーティー会場までエスコートいたします。お手を」
「ぱ、パーティー?」
何も言わずにニコリと微笑みを返す彼はソファーの前に跪き手を差し出す
よく分からないまま手を取ればリビングからキッチンへと移動するようだ
廊下はオレンジ色の明かりが灯っていて幻想世界へと案内されているようだった
そしてキッチンの扉の前で止まりセバスチャンが扉を開ける
「どうぞ。お入りください」
暗闇のキッチンに案内され少し不気味な感じがしたが足を進める
すると急に明かりが灯されて目の前には豪華な食事が並んでいた
しかも中央にはケーキが置いてあるのが見えた
「Happy birthday アリス」
そう後ろから言われくるりと振り返る
いつの間にこんなものを用意したのか気になるところはあるが、それよりも私の誕生日を覚えていてくれたことの方が嬉しくて思わず彼に抱きついていた
「セバスチャン!ありがとう!覚えててくれたのね」
「紳士たるもの妻の誕生日くらい祝えなくて、どうします?」
そっと抱き返してくれる温もり
これからも、ずっとこんな幸せが続けばいいと
最高の誕生日
最愛の夫と二人きりの空間
「生クリームが口の端についていますが、敢えて…でしょうか」
口の端の生クリームをすくいとれば舐める彼
流石にこのやりとりは恥ずかしい
暫くケーキに手をつけないでいれば彼はため息をついた
しかし、その表情は面白そうだ
私のケーキ皿を自分の目の前に置けばフォークを差し出してくる
「動けないのでしたら私が食べさせてあげる他、方法はありませんよね?」
またこの彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて飄々と言う
仕方なく一口それをいただくことにした
「この愛も、この感情も、温かさも全て貴女に出会えたから分かりました。貴女には感謝しているのですよ。生まれてきてくれて、ありがとうございます」
思いもよらない言葉に唖然としてしまったが
それを笑顔で返す
それが私の貴方にできる恩返し
「私もセバスチャンに出会えて良かった」
「愛しています」
二人の空間に響く恋の音