砂糖入りの紅茶より甘い日々を 諸星さんお誕生日作品
第1章 とある日のミカエリス家
鐘が鳴る
盛大な歓声が上がる
花びらが舞って
私は花束を空へと飛ばした
-ロイヤルミルクティーのような休日-
盛大に式が行われた、とある日の午後
アリスこと、私の性はついにミカエリスとなる
となりにいるのは凛とした態度で落ち着き払った彼
彼の名はセバスチャン・ミカエリスといい、この度、私たちは夫婦となる
私は幸せの絶頂に達していた
人生において、これほど記憶に残る幸せはないだろう
「アリス。手を、とてもお似合いです。貴女のセンスもいいですが何よりそれを着ている貴女が一番綺麗です」
微笑みながら差し出される英国貴族紳士の手を取る
彼は頭脳明晰だし、おまけに容姿も誰もが見惚れるものだ
そんな彼から直に褒め言葉を貰えば嬉し恥ずかしいような気持ちになる
けれど嬉しいのに変わりはないので精一杯の笑みで返す
これから貴方と歩む道、どんな困難があろうとも二人なら乗り越えてゆける
私は、そう信じた
「成る程…えぇ。えぇ、分かりました。こちらで調べ次第お持ちいたします。」
結婚式から数日後、私たちは同棲生活を始めた
見目麗しい彼と二人きりの家
それはもう心臓が高鳴りっぱなしで落ち着かないが、とても幸せだ
だが彼は先程から仕事関係の電話で長話をしている
仕事はバトラーで名門貴族であるファントムハイヴ家に勤めている
彼には一言、言われたことがある
「私は家を留守にする場合が多いかもしれません。貴女を悲しませてしまうかもしれない…ですが約束します。いかなる時でも貴女への気持ちに変わりはありません」
こうして新婚生活を送るわけだが彼は、このようにして毎日多忙な日々と戦っている
寂しくないかといわれれば、それは寂しいに決まっている
好きな人とゆっくりとした時間が過ごせないなんて本当に苦痛だ
今日もスケジュール帳を片手に手を顎に当てて考え込む姿が目に入る
結婚したら女は我慢が必要になるというけれど、それはこういうことでもあるのかもしれない
「おや。いかがなさいました?」
私は考えれば考えるほど気分が沈んでいっていたようでソファーに腰を掛けていたところにセバスチャンがやってきた
紅色の瞳が密かに怪しく光っている
ミステリアスな美男子とはこういう人のことを言うのだなと、つくづく思わせられる
すっかり魅了されてしまい、ただじっと彼を見つめる形になっていた