第2章 プロローグ
平子隊長が帰ってくる前に自分の仕事を終えてしまった私は、自分の部屋で就寝の準備をしていた。
すると、部屋の襖の向こうから慣れた霊圧を感じた。
「お疲れ様です。何かありましたか?」
襖に向かって微笑みながら声をかけた。
その声が届いたのかその人は静かに襖を開けた。
現れたのは平子隊長だった。
隊長はどこか気まずそうにしながら部屋に入り、私の隣に座った。
「・・・最近、悪夢は見てないんか?」
目をそらしながら聞いてくる隊長がどこか可愛くてつい顔が緩んでしまう。
「ええ、おかげさまで。」
「そうか、なら、いいんや。」
隊長はそれだけ言うとすぐに立ち上がり、部屋を立ち去ろうとしたので私は一言、隊長の背中に向かって声を投げた。
「何処かへ行くんですか?」
隊長は無言で立ち尽くした。
部屋に沈黙が流れ、私は不安がこみ上げてきた。
そんな沈黙を破るように隊長はいきなり振り返り私を抱きしめた。
強く優しく抱きしめながら、隊長は囁くように言ったのだ。
「雪乃、大丈夫や。オレはどこにも行かん。雪乃」
その言葉は妙に重くて、私は危険な任務に行くのだな、と察しがついた。
「わかってます。・・・私は大丈夫、だから・・・
気をつけていってらっしゃい、真子。」
私が抱きしめ返すと隊長は照れたように返事をして、
すぐに部屋を出て行った。