第2章 プロローグ
平子隊長と出会ったのは、私がまだ子供の頃だった。
でも、なぜだか私にその記憶は残っていない。
目が覚めたら瀞霊廷の平子隊長の部屋にいて、
それまで自分が何者だったのか、何処に住んでいたのか、何も覚えていなかった。
そんな私に平子隊長は名前を与え、大切に育ててくれた。
私が死神になり、護廷十三隊の五番隊三席になった時、平子隊長は私を拾った日の出来事を教えてくれた。
なんと私は流魂街の末端にある竹林で眠っていたそうだ。
平子隊長はたまたまその竹林付近に出現したホロウを討伐する任務を終えたところだったという。
ひときわ大きな竹の根元でうずくまるようにして眠っていた私は一言でいうと月から降りた〝かぐや姫”のようだったと言っていた。
平子隊長は私を竹林の中にほおっておくこともできず、家に連れ帰った。
私が竹林から外に出た瞬間、すべての竹が金色に輝き、
風も吹いていないのにサワサワと葉を揺らした。
平子隊長や、他の隊員たちも驚き歩む足を止めたが、竹達はすぐに元の姿に戻ったそうな。
平子隊長が私に付けた名は 柊 雪乃
意味は特になく、「直感や!」と元気に言われてしまった。
けれど、瀞霊廷でそのことを知っている人の中には私をその名で呼ばない人が数人いる。
始まりは京楽隊長だった。
私と初めて会った時は「雪乃ちゃん」と呼んでくれていたのだが、次に会った時は違っていた。
どこで話を聞いたのかはわからない。
ただ京楽隊長はその時以来、私を見かけると必ず
「おっ、かぐや姫!」
と声をかけるのだった。
それが瀞霊廷内で広まり、はじめは嫌がったものの、もう慣れてしまった。