第3章 日常
夕暮れ時、雪乃は宴の会場に行く前にある処で寄り道をしていた。
他の隊舎、しかも隊長室のソファに寝そべってぐうたらとしていると、目の前のテーブルにお茶が置かれた。
今にも寝てしまいそうな雪乃は頭に暖かいぬくもりを感じて顔を上げる。
「あんまり遅かったら京楽隊長に怒られるんじゃないか?」
雪乃の頭を撫でつづけながら優しい声を降らせたのは
九番隊隊長 東仙 要 だ。
雪乃は平子がいなくなってからはずっと東仙隊長に甘えっぱなしだった。
いわゆる頼れるお兄さん的存在である。
「大丈夫ですよー。」
雪乃がふにゃっと笑うと、東仙隊長はやれやれといった様子で小さくため息をついた。
「東仙隊長もくればいいのにー・・・。」
「遠慮させてもらうよ。」
「えー・・・。」
「今日はやることが多くてね。今度は参加させてもらおう。」
話しながらも書類にサインをしていく東仙隊長をみて雪乃はしまった、と思った。
(あ・・・仕事の邪魔しちゃったのかも・・・)
それでもまだこの暖かい空間の中にいたいと思う自分もいて、一人で葛藤している雪乃。
それを見た東仙隊長は少し冷めた御茶の隣に何冊か冊子を置いた。
「これが片付けば一段落がつく。手伝ってくれるか?」
雪乃はまだここに入れる理由ができたことをうれしく思い、元気に返事をして仕事に取り掛かった。
そしてときどき東仙隊長が書いている書類を覗き見ては、字の綺麗さに驚嘆し、
「そんな綺麗な字書けるなんて、やっぱりみえてるんでるよね?」
「ばれてしまったか・・・。」
なんて冗談を言い二人で笑っていた。