第3章 きっかけ 真田弦一郎
その日の帰り、私は自分の家までの道のりをゆっくりしたペースで歩く。
「…テニス部の人達はもう家帰ったのかな…。」
今日の試合、ほんとに惜しかったなぁ…。
「千崎!」
後ろのほうから、とても聞き慣れた声。
「さ…真田君…!?ど、どうして…。」
「蓮二が教えてくれてな、お前が見に来ていると。」
「そ、そっか…あの、試合…惜しかったね…。」
「あぁ、だが、俺は全力を出しきった。試合には負けたが、赤也達今の2年がきっとリベンジを果たす。王者立海の名にかけてな。」
そう真田君は呟き、遠くを眺め
「…それに、俺はいつも以上に力を発揮出来た。それは、お前のお陰なのだろう。ありがとう、千崎。」
「…ずるいや、真田君…。私の気持ち知らないで…。」
「…む?どうゆう意味だ?」
「…私、知ってるよ…真田君がいつも部活終わったあとも自主練してたの…人一倍努力家で…それでも何事にも手を抜かなくて…。」
あの時、図書室で見せてくれたあの微笑みが思い浮ぶ…そんな真田君を、私は…。
「…私真田君が…好き…。」