第9章 あなたの分まで
~ラビサイド~
ドガァーン!!
物凄い音が隣の書斎から聞こえた。
神田と同時に紅茶を吹き出して、
咳き込みながら書斎のドアを開く。
「なにがっ.......」
「ラビーーーーーーーーー!!!!!!!!」
目の前の光景に目を見開いた。
ダニエルがリランに覆い被さっていて、
しかもリランのことを殴り付けたのだ。
オレはその瞬間、キレた。
「テメェッ!!!!
何してやがる!!!!!」
駆け寄るなり胸ぐらを
掴み上げた。
至近距離で睨み付ける。
知らず知らず殺気がこもった。
ダニエルは怯えたように顔をひきつらせた。
「おい、しっかりしろ。
聞こえるか?」
神田がリランを抱き上げて
声をかけている。
オレは、ダニエルを壁に投げつけると
神田に駆け寄った。
リランはコートが脱げかけて、
シャツが裂かれていた。
下着をなるべく見ないように、
コートの前を留めてやる。
「あごを殴られて、
少し気を失っているだけだ。
すぐに起きるだろ」
神田が冷静に言う。
オレは不安に思いリランを見つめた。
ー 体中の傷.......。
きっと、過去の名残さ。
神田も見たのだろうが、
何も言わない。
そろそろと逃げ出そうとしている
ダニエルを視界の端に捉えたとき、
神田がリランをオレに押し付けて
目の前から消えた。
「ひぃっ.......こ、殺さないでくれ...」
「黙って逃げようとしてんじゃねぇよ
クソ野郎。」
いつの間にか移動した
神田が、【六幻】をダニエルに突き付け
世にも恐ろしい声で言った。
「べ、別に私はっ!
いぃ、いかがわしいことを
しようとしていた訳ではないぞ!!」
腰を抜かしたまま
わめきたてる男は、かなり醜い。
「こ、こんなことをしてっ
どういうことになるのか
分かってるのか!?」
「へぇ...どうなるんだ?」
声を裏返して叫ぶダニエルに、
神田が【六幻】をさらに首に
食い込ませる。
「わ、私はかなりの額を
教団に投資してやってるんだ!!
この投資が無くなったら、
痛手だろうな!!!」
恐怖に青ざめて震えているくせに、
ダニエルはわめくのをやめない。