第9章 あなたの分まで
駅から十数分歩いた場所にある、
ダニエルの屋敷。
「でっけぇぇ...」
「お待ちしておりました。
どうぞこちらへ」
立派な屋敷を見上げた。
使用人らしい老人に連れられて、
書斎へ入っていく。
その道中にある装飾品や調度品も
かなり豪華で高価そうな物ばかりだった。
「黒の教団からの護衛が
到着致しました、ご主人様。」
老人が声をかけると、
窓辺に立っていた男性が振り返った。
仕立ての良いスーツを着て、
きちんと髪を撫で付けている。
中肉中背のいかにも貴族然とした男だ。
しかし、つり上がった目からは
性悪そうな雰囲気が漂ってくる。
「こんなガキを送り込んでくるなど...。
教団は私を舐めておるのか?」
オレ達を見るなり発した言葉が
それだった。
左端から順に
カジム、オレ、神田と見ていく。
そしてリランを見た瞬間、
眉を跳ねあげた。
「ほう...。まあ、いいだろう。
退治はもう少し後だ。
とりあえず客をもてなしなさい。」
老人に向かって言うと、
ダニエルは近付いてきた。
「さあ、エクソシスト方。
ティータイムにしましょう」
リランの肩に手を置いて、
ドアの方へ促す。
心なしか、リランを自分の方へ
引き付けたように見えたのは
気のせいだろうか?
不安に思ったが、
とりあえずは書斎の隣の部屋へ入る。
ダニエル リラン
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机
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カジム ラビ 神田
という具合に座る。
老人が、美味しそうな香りの
紅茶を持って皆の前に置いていった。
香ばしく焼けたクッキーも置く。
「どうぞお召し上がりください」
ダニエルにすすめられて、
紅茶を飲み、クッキーをかじる。
「食べたら、退治に行きますか?」
リランがダニエルに聞いた。
ダニエルはリランに顔を近付け、
ニヤニヤ笑った。
「そんなに焦らずとも.......。
旅でお疲れでしょう?
明日でもよいのですから」
気遣うそぶりをしてリランの手を握る。
リランは微妙に後ろへ反って、
苦笑いを浮かべた。
「いえ、別に.......。」
馴れ馴れしいダニエルに、
オレは内心イラついていた。