第9章 あなたの分まで
次の日の朝、
オレ達は荷物をまとめた。
「それでは、出発しましょう」
行き先はストリプという隣街。
列車に乗り込んで、
4人掛けの座席に座る。
「今まで移動は方舟とか船だったから、
列車に乗るの初めてなの!」
ー 可愛い.......じゃねぇ!!
どうしたんだ、オレ.......。
はしゃぐリランを複雑な思いで
見つめる。
席順は窓際の席に神田、隣にオレ。
神田の向かいにリランで、
その隣にカジム。
オレは資料を取り出すと、
護衛の内容を読んだ。
「えーと、護衛する人はダニエルって男性さ。
教団の重要なサポーターで、
かなりの金持ち。
最近アクマに付け狙われてるらしいから、
その護衛しつつアクマを誘き出して
破壊しろってさ。」
窓の外を興味深げに見ていた
リランがオレの顔を見た。
「サポーター?って、
教団に資金提供とかしてくれる
人達のことだよね?」
「ああ、そうさ」
あんな風にオレの為に泣いてくれた
リランが気恥ずかしくて、
極力目を合わせないようにして答える。
「そっかー、じゃあ護衛頑張んないとね!」
眩しいくらいの笑顔を
浮かべているのが嫌でも分かる。
「神田、ちょっとは愛想良くしなよ?」
「...悪かったな。
俺はいつも通りでいるぞ」
「いつも通りがダメなんだって!」
「ユウもたまには笑ったらどうさ?」
「そこに直れ。刻んでやる」
「すまねぇさっ!!」
賑やかに話すオレ達を、
カジムは微笑んで眺めている。
列車は、ガタゴトと揺れながら
進んでいった。