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孤独を無くしたい 【D.Gray-man】

第9章 あなたの分まで


オレの言葉に、リランは
弾かれたように顔を上げた。

「ラビはッ...!!
 何てひどいの!?
 あんなに優しくしていたのに!
 この子達を救えなかったことが、
 悔しくないの!?」

怒りに震えたリランの言葉に、
オレは、胸の奥が冷えた気がした。

今までとはうって変わって、
冷たい目に睨まれた
リランは、怯えたように
顔を引きつらせたが、
目を逸らすことはしなかった。

「悲しい?悔しい?
 犠牲なんさしょうがねぇだろ。
 これは戦争さ。
 目の前で死んでないだけで、
 世界中で今も何人、何十人と
 死んでるんさ。
 全てを救うなんて出来るわけがねぇ。
 自分すら犠牲にして、命がけで
 戦ってんだ。
 その死を嘆いてたんじゃ、
 何も始まらねぇ。」


特に感情を込めることなく、
オレは自分に言い聞かせるように
淡々と言った。

「オレはブックマンさ。
 知ってんだろ?
 全ては歴史の一部さ。
 私情を交えて間違った記録は遺せない。」

リランは、そこでオレから
目を逸らした。
ぽつりと呟く。

「犠牲は仕方ないかもしれないけど。
 でも、私はあなたと違うもん。
 せめて、目の前で散った命を
 私は悔やむし、悲しく思うよ」

ボロ布を地面に置き、
そっと土を被せる。
その表面を細い指で撫で、
リランはオレを見上げた。
悲しそうな顔で、微かに微笑む。


「私情を交えてはいけないなら、
 どうして。
 あなたはそんなに哀しい顔をするの?」


心を見透かされた気がした。
再び合った視線を、今度はオレが逸らす。


「私には、私情を交えることは出来ないけど、
 この子達の死を決して忘れない
 って言ってるように聞こえたよ。」


リランの言葉に、オレは何も言わなかった。
転がっていた胡蝶蘭を拾い上げ、
軽く口付ける。
それを、盛り土の上に置いた。

見ていたリランが、
静かに泣き出した。

「つっ....。私、ラビの分まで悲しむよ...。
 ラビの心の痛みが分かる気がするの。」


オレは、無言でリランの頭を撫でた。
オレの分まで悲しんでくれる
リランのことが愛しいと思い、
その思いを振り払う。

リランが泣き止むまで、
神田もカジムも、何も言わずに
待ってくれていた。
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