第3章 名前の無い少女
「名前が?無いって.......」
ラビが微妙な顔をした。
.......全員微妙な顔だった。
「今まで呼ばれてた名前とか......
あの、両親は?」
「両親は知らない。
小さい頃の記憶無いもの。
呼ばれてた名前なら、たくさんあるよ?
アンジー、リズ、マヤーにスーナ、ユルン.......」
アレンの質問に、
今までの名前を指折り数えていく。
ラビが、複雑な顔をした。
自分と同じだったから。
「気に入ってる名前とかは、ないの?」
それをさえぎって、リナリーが尋ねる。
「無いわ。気にしなくていいよ、
私そろそろ行くし。
助けてくれて、どうもありがとう。」
あっさり言うと、頭を下げた。
そのまま歩き出そうとした時、
「ちょっと待つさ!!!!
それ、その額のヤツ...!」
ラビが、少女の腕を掴んだ。
少女はハッとした様子で、
ラビの手を振り払い睨み付けた。
ラビは少女が頭を下げたとき、
揺れた前髪の隙間から、
淡く輝く十字架を見ていた。
そして、アレンとリナリーも。
「まさか、それ、
イノセンス.......??」
アレンは目を見開いて固まっていた。
少女は、3人の様子を見て
ため息をつき諦めたように
前髪をかきあげた。
「イノセンスって、
さっきの化け物も言ってた。
これのことなの?
これで、不思議な力が使えるの。」
少女の額には、アレンの左手と同じ
十字架のような印が浮き出て、
淡い緑色に輝いていた。
「.......とんだ収穫があったさー、
新しい適合者を発見出来たさ」
「長い話をする必要が
ありそうですね?」
リナリーは、
ラビとアレンを見、少女を見た。
そして、にっこり笑った。
「長い話は後にするとして、
あなたの名前、リランって
どうかしら?」