第8章 アジア支部にて
~ラビサイド~
パーティーを終えて
自室へ戻る途中、オレは
リランの笑顔を思い出していた。
「ただいま、みんな」
と言って笑ったリランは
大人びて綺麗だった。
その頬には、綺麗な涙がするする流れて...。
あの笑顔に射止められた男は
はたして何人いたのか。
オレは、数人が顔を赤くしたのを
目ざとく見つけて、
さりげなく隠すようにして
立ってしまった。
ー オレは、リランを気にかけすぎか...?
でも、リランのあんな絶望した顔は
もう見たくないと思う。
だから、せめて良い男と.......。
はっと我に返った。
「オレは...馬鹿か?」
こんなことを考えることこそ
無駄なことだ。
オレがリランの幸せを気にかける
なんて。
「オレは、ブックマンさ」
微かな心の痛みは、
黙殺した。
「ラビ?どうしたんですか?」
聞き覚えのある声。
振り返ると、アレンだった。
手にパンを抱えて、
オレを見て首を傾げている。
「アレン!なんさー、そのパン?
さっきあんな食ってたのに」
「部屋に持って帰っていいって
ジェリーさんが。
僕はまだ食べれますよー」
明るく問い返すと、
アレンはニコニコ言った。
そして、ニコニコしたまま、
「何で消化不良みたいな
顔してたんですか?」
と聞いてきた。
沈黙したオレの隣にやってきて、
パンをもぐもぐ食べだす。
「モグモグ...リランのことですか?」
思わずアレンの顔を凝視してしまった。
「図星ですか?モグモグ...
僕、人の考え読むの得意なんですよ」
ー いや、あのイカサマっぷりを見れば
そんなのよく分かるさー.......。
アレンの瞳がオレを覗き込む。
「リラン、可愛いですよね」
相変わらず沈黙するオレに、
アレンがそんなことを言う。
「幸せになって欲しいですよね」
その言葉に、頷く。
アレンは我が意を得たりと
言わんばかりにニコッとした。
そして、
「僕が幸せにしてもいいですか?」
「は?」