第7章 過去
~リランサイド~
ラビの傷は深い。
出血量から危険なことは明らかだった。
ー 血を止めないと.......。
私はラビの体を起こした。
膝の上に頭をのせて、
腹部の傷に手をかざす。
「イノセンス発動」
やったことはないが、
願いを込めて呟く。
「歪め.......膜よ。
傷に被さって血を止めて...!」
青い光がラビを取り巻く。
腹部に光が集束し、ふわっと消えた。
コートを脱がせて服をまくる。
傷には、青い膜ができて
出血を止めていた。
「できた...」
胸を撫で下ろす。
隣で、アレンもほっと息をついていた。
苦しげだったラビの顔が、
少しだけ穏やかになっている。
私はラビのバンダナのあたりを
そっと撫でた。
そして、すぐに大切なことを思い出した。
アレンに詰め寄る。
「アレン!!ロードが...ロードが
ノアって本当なの!?」
アレンは驚いた顔をした後、
苦い顔で頷いた。
「あの子が...!?
世界の破滅を企むノアでしょう!?
何であんな子が.......」
自分で言いながら、
直視するべき現実を受け入れる。
「世界中で、人々を苦しめてる、
千年伯爵の仲間...なんだよね?
倒すべき.......敵、なんだよね?」
確認する私の言葉に、
アレンは無言で頷く。
「本当に人間なんだ...」
ショックだった。
落ち込む私の肩にアレンが手を置いた。
「僕の退魔の剣は、ノアのメモリー...
彼らが伯爵に味方する理由である、
彼らの本質とも言えるものを
彼らを殺すことなく、
破壊することができます。」
私は驚いてアレンの顔を見つめた。
視線がアレンの左腕に吸い寄せられる。
アレンは真剣な顔のまま続けた。
「僕は、人間とアクマ、両方を
救済したい。
できることなら、ノアも助けたい。
だから戦うんです」
そう言うと、立ち上がった。
「リランはラビを看ていてください。
僕は神田に加勢してきます。」
止める間もなく、
アレンは駆け出して行ってしまった。