第7章 過去
リナリーははっきりと
嫌悪に顔を歪めた。
「来ないで、私が汚れるわ」
「僕のリナリーには触らないでよ」
顔を背けて去っていくうえに、
コムイさんが視界を覆った。
「ラビ...ラビ!」
今度はラビに手を伸ばした。
ただひたすら恐ろしくて、
助けて欲しかった。
ラビは、伸ばした手を掴んでくれた。
でも...
「そんな汚ない手ぇ伸ばして、
オレにどうして欲しいんさ?」
その手は、決して
救いでは無かった。
ラビの手を振り払って、
はっと手をかざす。
手は、形容し難い汚れにまみれていた。
「ひっ.......」
息を飲む。
「私を見ないで.......」
じわじわと近付いてくる人の輪。
「殺しなよ。
でないとあんたが犯られるよ?
殺りなよ。ねぇ、武器はあるでしょ?」
頭を抱え込んだ私の耳元に、
『私』が囁く。
「まだ知り合ったばっかの人間よ?
殺したって心は痛まないでしょう?
ねぇ、早くしないと。」
じわじわ、じわじわ。
ラビの靴の爪先が視界に入った。
その途端、抑えがきかなくなった。
「う.......うあ...あああああああ!!!!」
私はいつの間にか
イノセンスの短剣を握り締めていた。
振りかざす。
しかし、ラビに突き刺さす瞬間、
私は迷って手を止めた。
すると、周りの人間がかき消えた。
「消えた...」
「「リラン!!」」
呟くと、ラビとアレンの声がした。
「全部、幻さ!!
オレ達はリランを汚ないなんて
思わねぇ!!!!」
「助けに来ました!!」
振り返れば、ラビとアレンがいた。
駆け寄ってくる2人に視界がぼやける。
涙を流す私を見て、
2人も辛そうな顔をした。
もう、迷わない。
私は短剣を握る手に力を込めた。