第7章 過去
座り込む『私』を、
私は見下ろしていた。
「.......おいおい、生きてるか?」
たった今、路地を曲がってきた
男が『私』に声をかけた。
虚ろな瞳を男に向けた『私』は
声を発さない。
赤く、バサバサした長い髪を
垂れ流し、見るからに
遊んでそうな男だった。
この時の記憶は何故か鮮明に
覚えている。
男の着けている仮面が
珍しかったからだろうか。
男は無反応の『私』を
抱き上げて路地から出ていった。
元のチェックの床と
ロウソクが戻ってきた。
私は床に崩れ落ちた。
視線は床の模様に向く。
ふと、目の前に白い脚があるのが
目に入った。
見上げると、
『私』だった。
恨めしそうな瞳で私を見る。
「あんたのせいで、
ネイは死んだのに。
どうしてあんたは生きてるの?
汚ない、穢れた女。
教団だって、あんたなんか必要としてない。
見てみなよ、周りを。
今までの奴らと、みんなは
どこが違うのかしら?」
『私』の瞳は死にたいと
願っていた。
同時に、私に死ねと言っていた。
誰かの気配を感じて振り返る。
そこには、ラビがいた。
「ラビ.......」
「そんな汚ない女だとは
思わなかったさ。
キレイな顔してホントは
汚れきってたんだな」
「何で教団になんか誘ったんでしょう?
...あ、でも活用法はありますね。
今までと同じことをさせれば
いいんじゃないですか?」
「いい考えだね~、アレン君。
じゃあそうしようか。」
教団のみんなが私を囲んで
嫌な笑みを浮かべた。
ひどく見覚えのある笑み。
それは、今まで私を弄んできた
男達と、同じ笑みだった。
恐ろしくなって自分の腕で自分を抱く。
後ろも前も逃げ場所はない。
恐怖にすくみつつ、
必死で助けを探した。
コムイさんの後ろから
私を覗くリナリーを見つけた。
「リナリー...!助けて...!」