第7章 過去
目の前に現れる昔の記憶。
現実感があって触れそうなのに、
全て通り抜ける。
ー ああ、そうか.........
過去なのだから触れる訳がない。
「何で...何で...?
忘れたいのに...私は...!!」
目の前で『私』が女に
蹴り飛ばされる。
『私』は私の体を通り抜けて
壁に激突した。
響く哄笑は、深く深く心を抉る。
「ハハ...何これ.......?
もう、いいよ...この後のことは
やめて...お願い...」
場面が切り替わる。
現れたのは、14歳になった『私』と
金髪の少女の姿。
『私』が次に売られた店で
出会った、ネイという少女。
同い年でとても仲良くなった子だった。
ネイは、私と同じような境遇なのに、
笑みを絶やさない美しい少女だった。
彼女のおかげで、
私は心を取り戻した。
なのに。
「嫌...やだやだやだ...」
私の目の前に現れたのは
ボロボロになって横たわるネイ。
自慢の金髪はグチャグチャになって
細い体は痣だらけ。
頼りない腕は、右手があらぬ方向に
曲がっていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『私』と私は同時に絶叫した。
駆け寄ってネイを抱き上げる『私』。
床に崩れ落ちて泣き叫ぶ私。
どっちも私。
頭が狂いそうだった。