第26章 君の行方
~第三者サイド~
「シリー!!これどこに運ぶの?」
「あー、えーと三番テーブルよ!」
「りょーかーいっ」
ここはイギリス、スコットランドの
賑やかな港町。
とある一軒の居酒屋兼宿屋は、
ここらで一番人気の店だ。
その名も、
「いらっしゃいませーっ!!
神のまにまに亭へようこそ!」
ネームセンスもさることながら、
意味が全く不明だ。
働くのは全て女、しかも身寄りのない
少女ばかりという店。
店長はセシリア、まだ25歳の若々しい
美女だった。
愛称はシリー。
「シリー!料理はまだ?」
「エレナ、今確認するわ!
イライザ!料理は?」
「今エマに運ばせた!さっさと持っていきな!」
賑やかな店内には、
少女達の明るい声が飛び交っている。
夕飯時の忙しい時間帯、てんてこまいの
少女達は、それでも笑顔が輝いていた。
どうにかやりくりし、店仕舞いをする。
セシリアは、長い金髪の巻き毛を振り払って、
ぐったりと椅子に座る少女達へ微笑んだ。
「みんなお疲れ様!
今日はもう終いだから、
部屋に帰ってゆっくりしてね」
「「「「はーい、おやすみ、シリー」」」」
「おやすみ」
全員を見送ったセシリアは、
厨房で3つほどのサンドイッチを作って
部屋へ持ち帰った。
ドアを開ければ、ベッドの上で
本を読んでいた少女が顔を上げる。
「お帰り、シリー」
「ファニーただいま。具合はどう?」
ファニーと呼ばれた少女は、
明るい茶髪を揺らして微笑んだ。
「大丈夫よ。とても気分がいいの。
それはサンドイッチ?」
「ええ、ファニーに」
「私、何も手伝えてないのにごめんなさい」
「気にしないで、元気になったら
バリバリ働いてもらうから」
セシリアは、サンドイッチを
ファニーに渡すと立ち上がった。
「売り上げを清算してくるわ。
ファニー、食べて先寝ててね」
「うん」
帳簿を手にしたセシリアは、
書かれた金額と睨めっこしながら
店へ戻っていった。