第25章 襲撃
幸運を運ぶクローバー。
私達は、礼を言って歩き出した。
「神の涙のしずくかぁ...。
悲しい物なのかな?」
「違うわ、きっと嬉し涙よ」
リナリーが強い風に髪を押さえる。
チャリ、とブレスレットが音をたてた。
「そういえば、リナリーのチャームは
本当にアレンぽいよね」
「そうね。十字架にクラウンだもの」
複雑そうなリナリーに、
聞きたいことを言ってみる。
「リナリーってさ、...アレンのこと好き?」
「い、いきなりどうしたの?」
「好きな人いるのかなって」
リナリーは困ったように
考え込んだ。
「...好きな人は、いないわ。
私には兄さんがいるもの。
みんな家族で、同じように大好き」
「好きにはならない?」
「みんな好きよ。家族だもん」
はぐらかされたような気もするけど、
これ以上聞いても無駄だろうからやめる。
「兄さんのマグカップ、これでいいかしら」
30分近く悩んだ末にリナリーが選んだのは、
白地にピンクのウサギが描かれた
マグカップだ。
「前のと変わらないデザインだけど.......」
ぶつぶつ呟くリナリーの背中を押して
会計に行く。
「ほらほら悩んでないで買った買った!」
「もー、リランったら急かさないで!」
笑いながら店を出ると、
いい天気だったのに曇りはじめていた。
「あちゃー、降りそうだね」
すごい勢いで迫ってくる黒い雲を見て、
ため息が出た。
「今日は早めに帰ろ...」
言いかけてリナリーを見ると、
リナリーは真っ青な顔で
目を見開いていた。
視線の先は空。
「リナリー?どうしたの?行こうよ」
「あれは...雲じゃないわ、アクマよ!」
「はぁ!?」
思わず叫ぶ。
慌てて目を凝らせば.......
「どうして、あんな大量のアクマが...?」
周りの人々も異常に気付き、
空を見上げて何か言い合っている。
「まるで...あのときの...」
「リナリー!?」
「.......」
「リナリーしっかりしてッ!
街の人を守らなきゃ!!!」
まるで、怯えているようだ。
リナリーは我に返ったけれど、
手は微かに震えている。
私はその手を掴むと、リナリーを抱き締めた。