第5章 初任務
コムイさんがアレンに、
「じゃあアレンくん、
指定した場所にゲートを
開いてくれるかい?」
と言った。
ー ゲート?アレンが
開くってどういうことだろう。
ラビが、私の顔を覗き込んできた。
「リラン、方舟のこと
聞いた?」
ー 方舟?ああ、教団の移動手段っていうあれか。
見せて貰うはずが、機会が無くて
お預けだったやつ。
アレンしか操作出来ないって話だけど...。
私は、納得してから
期待する瞳でアレンを見た。
アレンが苦笑して頷く。
ー やった♪
内心小躍りしながら
アレンに付いて歩いていく。
方舟のあるところへと来た。
「これが方舟?
何か想像してたのと違う...」
「これはゲートですよ。
方舟に入る為のものです。」
白く輝いている
薄っぺらそうな『ゲート』
を見て、私はぽけっとした。
アレンが普通に『ゲート』に
近付く。
「それじゃ、行ってきます。」
コムイさんやその場にいた
科学班のみんなに笑いかけ、
アレンの姿が『ゲート』に
消えていった。
ラビに背中を押されて
私も後に続く。
「 リラン」
コムイさんに呼ばれて
振り返る。
コムイさんと科学班のみんなが
笑顔で手をあげていた。
「いってらっしゃい」
私は嬉しくなった。
「いってきます!」
と言い、方舟の中に入る。
中には...白い街並みが
広がっていた。
ラビもすぐ後に続いて
出てきた。
アレンが、目の前の扉を
無造作に開き、
入っていく。
閉まる前に扉に飛び付いて
中を覗き込むと、部屋があった。
白いピアノが置いてある。
扉から覗き込む私を
面白がるように、ラビが頭をポンと叩いて
部屋に入っていった。
「どうしたんですか?
入ってきて良いですよ。」
ピアノの前に立った
アレンが私を呼んだ。
でも、部屋が少し不気味で
入りたくなかった。
ー よく分からないけど。
首を振ると、
アレンは不思議そうに首を傾げつつ、
ピアノに手を置いた。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
流れ出したピアノの音に
私は懐かしさを覚えた。
ラビはアレンの手元に
見入っていて、私はメロディーを
噛み締めるように聴きながら記憶を探る。
しかし、記憶にこのメロディーはない。
でも、とても懐かしい気がした。