第23章 この想いをあなたに
「...........憎い。
私を傷付けた人達、みんなが憎い。
心の中ではいつも、いつか
復讐してやりたいって思ってて、
そうしたらちゃんとした裁きを下してやる
って思ってた。
死ぬことが出来なかったっていうのもあるけど、
私が生きてきたのは、多分その為だった」
話し出すと、思っていたことが
とめどなく溢れた。
腹を撫で、言葉を続ける。
「この傷が、その証だった。
あいつらへの憎しみの象徴だったのに...。
この傷を見て、過去を過去にしないでいられたのに」
何故あのとき抵抗しなかったのだろう。
今さらながらに悔やまれる。
「あいつらが私を傷付けた証拠がない。
裁いてやることが出来ない。
過去にしたくないのに、
『傷があったこと』は『過去』になっちゃった。
どうすればいい?どうやって復讐すればいい?
あいつらの『過去』を呼び覚ますことは、
もう出来ないんだよ?」
そう、傷付けた人達の中で、
私の存在は取るに足らない『過去』の存在だ。
証拠もないのに「私を傷付けた」と喚いても
「だから何?証拠は?」で終わってしまう。
殺すつもりはない。
でも、もしその時が訪れたら.......。
「私は、これ以上汚れることをいとわない」
表面の汚れは消えても、
心も体も、どうせ汚れきっているのだから。
この手を血に染めることくらい
わけないだろう。
切った自分の血に濡れた手を見つめる。
「.......復讐に生きるとか
悲しいこと言わないでくれよ。
憎しみなんて捨てればいいさ。
捨てれるまで傍にいてやるから」
「簡単にポイ捨て出来るほど
小さい憎しみじゃないの」
「じゃあ、世界を守る為に戦う...とかは?」
「そんな大層なこと考えられないよ」
「アレンと一緒に、さ」
ラビに向き直る。
正面から見つめると、ラビは
真面目な顔で見返してきた。
「傍にいてくれるんじゃないの?」
「いや、いるけど.......」
「じゃあさ、私を抱いてよ」
私の一言に、ラビが固まった。
「は?」
私は別に照れるわけでもなく淡々と言った。