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孤独を無くしたい 【D.Gray-man】

第23章 この想いをあなたに


しばらく歩いて、研究室にたどり着く。
ドアの前に、ラビが立っていた。
預けていた背中を浮かせ、私を真っ直ぐ見つめる。

「ここ、これからリランが通う場所さ。
 道覚えた?」

「うん。大丈夫だよ」

「そっか」

珍しくテンションが低いらしい。
ラビはほんの少しだけ微笑んだ。

「今日は、明るい服着てんだ?
 似合ってるさ」

「ありがとう。...じゃあ、入るよ」

「うん」

ラビがドアを開け、私は中に入った。
研究室にはリーバー班長とコムイさん、
ブックマンやルベリエ長官に加えて、
白衣を着た知らない人が数人いた。

ラビが一緒に入ってきて、ドアを閉めるのを
気配で感じながら、コムイさんに目を向ける。

コムイさんは目が合うと優しく笑い、
リーバー班長は手をあげて挨拶してくれた。

軽く会釈して応える。

「それでは始めましょうか。
 綺麗な服を着ているところ申し訳ないが、
 こちらの服に着替えて頂きたい」

「...はい」

素直に白い服を受け取り、
ついたてで仕切られているスペースで
手早く着替えた。

患者服よりさらに簡素で、
ただの布に頭と腕を通す穴を
空けただけのような服。


― 実験体...


ルベリエに言われた言葉を思い出し、
知らず知らず眉をひそめた。

そして、言われるまま診察台のような
ものに横たわると、ますますその思いは強まった。

「今から、あなたのこの傷を消します」

「は?」

慌てて研究者のような人を見上げる。

「傷を消す?このお腹のをですか?」

「はい」

衝撃的すぎて言葉が出てこない。
まさか傷を消されるとは思っていなかった。

― この傷が消えたら、
  まるで私が私じゃなくなる気がする。
  怖い.......過去が『無かったこと』になるの?

過去を、傷を含めた全てを肯定出来たのに。
それが無くなるというのか。

.......それは、嫌だ。

訳の分からない焦燥感が募る。
腕に麻酔薬を入れた点滴が打たれた。


― ちょっと待って、私は.......


何も言えないまま、
私は意識を失った。
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