第22章 本当の家族
鮮やかな翡翠の瞳を
怒りに染めて、ロードを睨む。
「よくもリランに手ェ出してくれたな...。
許さねェッ!!」
「許さないのはこっちも同じだ」
平静そのもの、といった別の声。
ほぼその声と同時に、
4体のLv3が一斉に爆発した。
突風から顔を庇う。
― まさか、まさか...!!
「無事か」
「.......~~ッ!神田!!!」
「うるせェよ」
いつも通り、冷悧な顔。
でも、チラリと私を確認した神田は、
微かに安堵を滲ませた。
「おい、テメェを逃がすつもりはねぇよ」
「僕、君は嫌いなんだぁ~...。
リラン、また迎えに行くね」
「だから、二度と来んなって」
ラビが呟く間に、逃げるロードと
それを追う神田は、視界から消えていった。
戦闘体勢を解く。
息をつく間もなく、
またラビに抱き締められた。
一瞬息をつめる。
「ホント...心臓にわりぃ.......」
疲れているらしい。
でも、その声は隠しようがないほど
嬉しそうだ。
「オレさ、すっげー後悔してたんだ。
リランを悩ませてたこととか、
ノア野郎にあっさりさらわせちまったこととかさ」
「うん」
ラビが、何かを吐き出すように
話すのを、私は相槌を打つだけで
静かに聞いた。
「弱いってことは充分分かってる。
でも、リランに守られるほど
オレたち弱くねぇから。
だから.....1人で抱え込まないで欲しい」
「うん」
「もっと周りを信じて、頼れよ」
「うん」
「オレ達....仲間だろ?」
「っ....う...ん」
頭を撫でられる。
「だけど.........。
1人で、オレ達を守ろうとしてくれて、
本当にありがとう....!」
涙が溢れた。
嗚咽を堪えることなく、
私は泣いた。
少しして、ズビッと鼻をすする。
「やっぱり、ラビは私の太陽だ...」
笑うと、ラビは
「ん?」
と聞き返してきた。
「何でもない」
離れて、涙をぐいっと拭う。
「チッ、また逃げられた」
背後から歩いてきた神田を振り返る。
「神田!久しぶり!!」
その言葉に、神田は驚いたような顔をしたあと、
ふっと笑った。
「ああ。...帰るぞ」
【六幻】を一振りし、私の足枷を斬り捨てる。
私は、ようやくホームへと帰ることができた。