第21章 壊れる
~ティキサイド~
「ジャスデビが待ってるよ。
トランプの続きしたいって言ってたの。
次はロードも...ティキもやろうよ。
ね、だから帰ろう?」
いっそ痛々しいほどに、
リランは笑みに似ているけれど
笑みではない表情を浮かべた。
壊れたわけではなさそうだ。
むしろ、眼帯くんの攻撃を見て
正気に戻ったようで。
― 守りたい家族、か...。
そうなれなかったことを寂しく思う。
壊れたリランを洗脳して、
心を無理やり俺達に向けさせようと
思っていたけれど。
どうあってもリランの心は彼らを
選ぶだろう。
― いや...彼、かな?
また爆発音と共に空へ伸びる炎を見つめる。
「そんなに守りたい?」
呟くと、リランは寂しげに微笑んだ。
「たとえ傍にいなくても。
きっと...ラビが助け出してくれる。
世界の終わりにラビといられるなら、
私はもう...それでいい。
それだけでいい」
そう言って、空を仰ぐ。
「夜空はこんなに綺麗だって、
私はようやく知れたから」
それは、下を向くことしかせず、
誰かにすがることしかしなかった少女が
初めて上を向き.......
誰かを1人で守ろうと決意した瞬間だった。
俺は、静かに決意の滲む瞳を
見つめて、ため息を吐いた。
「何か、したいことある?」
諦めに似た思いで問う。
「.......私、ラビに孤独を埋めてもらったから。
だから今度は...私がラビの孤独を無くしたい」
「それ、傍にいないと無理じゃない?」
「...だよね」