第21章 壊れる
俺は、リランの拘束を解いた。
その場から動かないリランの背を、
トンと押す。
「ティキ?」
「...行けよ」
リランが目を見開いた。
見つめられることに耐えられず、
視線を逸らす。
「リランちゃんとは、ゲームを心の底から
楽しんでやりたいね。
その気になったら、また来いよ」
戸惑っていたリランが、
そっと背を向けたのが分かった。
― そのまま、次に目を開いたときに
目の前にいないようにしてくれ。
千年公に怒られるかなぁ、と思っていた時だった。
ドンッ
腹に衝撃を感じた。
ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。
慌てて目を開くと、
リランが俺に抱き付いていた。
「おい...?」
「ありがとう。
敵にこんなこと言うのも難だけど。
...本当にありがとう、ティキ」
顔をあげ、とびっきりの
笑顔を見せたリランは、
村の方へと全力で走っていく。
俺は、顔を手で覆って笑った。
「手放したのが、かなり惜しいな」
ロードに何を言われるとか、
千年公に怒られるとか、
今はそんなことどうでもいいくらいに
楽しい。
「次は遠慮なく殺しにいくから...
俺の手で死ねよ、リラン」