第21章 壊れる
~リランサイド~
「だああああ!またジョーカーかよっ!」
カードを投げ捨てて叫ぶデビットに、
私は思わず吹き出した。
さっきからババ抜きをしているはずなのに、
デビットとジャスデロはずっと
ジョーカーを交換しているだけなのだ。
「引くよ~」
ジャスデロから一枚カードを引く。
「やたっ!上がり!」
ペアになったカードを真ん中に
置き、ガッツポーズ。
「え~?もう上がってんの?ヒッ」
「俺達、全然カード減ってねぇよ」
「ヘタクソだから?」
「んだとコラ?あ"ぁ?」
凄むデビットを流し、笑った。
この双子はまるで子供のように無邪気だ。
ロードよりも。
ふと、ロードとティキを見た。
楽しそうに笑いあっているけれど、
どうしてもあの笑顔が不吉に見えるのは
気のせいだろうか。
「ヒヒッ、もっかいやろうよ!」
そう言って、ジャスデロが
カードを集め始めた。
視線をロード達から外し、私もカードを渡す。
少し動いたからか、足の鎖がチャリ、と鳴った。
私は肩を覆った。
寒くはないが、肩の傷跡が気になったのだ。
― 傷...お腹だけじゃなくて、元々全身に
あったからなぁ~。
今でも、その跡は薄く残っている。
― いくら治癒力が高くても、
さすがに傷跡までは消せないよね...。
ティキに暴かれたことを思い出し、
裾をぎゅっと握った。
その時、突然ロードが抱き付いてきた。
「リラン~!出掛けるよぉ~!」
「っ、ロード?どこに?」
無邪気に絡み付くロードに苦労しながら
立ち上がる。
目の前にティキがいて、見上げると
微笑まれた。
「リランちゃんの...
いや、行ってからのお楽しみ、かな?
双子は留守番よろしく」
「はああああ!?」
「意味分かんねぇし!ヒッ」
「そういやさっき、千年公が呼んでた」
「「それ先言えよ!」」
見事なハモりで叫び、
全く同じタイミングで走って行ってしまった。
「さて、邪魔者は消えたし...行きますか」
ティキが足の鎖を断ち切る。
足枷はそのままだけれど、
私は自由に動けるようになった。
そして、現れたゲートの中へ、
ロードに引っ張られるままに
足を踏み入れた。