第20章 家族
~ティキサイド~
ロードの容赦ない精神攻撃は、
確実に効いている。
― 俺達に手を貸せば大事な人間は助かり、
他の人間は死ぬ。
手を貸さなければこの人質は死に、
世界も滅ぶ。
そこまで考えて、苦笑した。
― こりゃ、俺達が勝つ前提になってんな。
リランちゃんの考え方でいくと...
この人質を見捨てて少年達、
教団の勝利を信じるか、
それとも諦めて俺達の勝利に加担し、
少年達だけでも救うか...ってとこだな。
諦めではなく人間への恨みかもしれないが。
「まどろっこしいねぇ~...」
耳を塞いで壁に寄りかかるリランを眺め、
俺はため息をついた。
人質をジャスデビに任せて
つかつかと近寄り、ロードを押し退ける。
「ちょっとティッキー、何するつもり?」
「俺のろのろするの嫌いなの。
いいから任せろって」
そう言って、リランの目の前に立つ。
右手で左肩を壁に押さえつけ、
左手で襟元をぐいっと下にさげた。
「っ.......」
抵抗するように上げられた手を
右手でまとめて掴む。
「なあ、この傷は一体誰にやられた?」
リランの体が震えた。
「人間だろ?弱くて醜い、人間だっただろ?」
左手に力を込め、
ドレスを引き裂く。
露になるのは、無数の傷跡。
腹部の傷は、目も当てられない。
本来肌色であるべき腹は
赤黒い傷が無数に覆い、
火傷や切り傷が縦横無尽に走っている。
「自分をこんなにした人間をどうしたいと思った?
同じ目に合わせてやりたい?
倍の苦しみを味合わせてやりたい?
それとも...殺したい?」
今の俺は黒い。
この少女が望むなら、いくらでも殺すつもりだった。