第20章 家族
「何で、人間はそのことを知らないの?」
黙り込んだ私に、ロードは
いくらか口調を優しくして
もう一度問う。
「教団は知ってるのにね?」
「それは.......」
頭が混乱してきた。
分からない。
「教団はね、正義のヒーローを名乗れないんだよ」
「どういうこと?」
訝しそうに問い返す。
ジャスデビとティキは、興味深そうに
私とロードの会話を聞いているだけだ。
「僕らが千年公のシナリオを進める目的のために
人間を殺すように、
教団は僕らを倒すという目的の為に
たくさんの人間を殺した」
教団が、守るべき人間を殺す?
「犠牲が無ければ救いはない...
その言葉のもとにね」
ドキッとした。
― ラビが言っていた.......。
私は、もう頭から教団を信じる気はなかった。
― ただ、ロード達の話を聞いて、判断する。
「特に意味もなく殺した人間は、
きっと教団の方が多いよ。
教団はね、その名の通り、
黒い歴史があるんだ」
「たとえば?」
前向きに話を聞く姿勢になった私に、
ロードは微笑を浮かべた。
「そうだね.......たとえば、
神田ユウ、だっけ?」
「神田?」
「うん。そいつ、人間じゃないよ」
「.......は?」
理解するのに時間がかかった。
「どういうこと...??」
「あれはね、教団が造り出した
人造人間なんだ。
詳しくは知らないけど、
可哀想な子だよね」
怖い。
これ以上聞くことが怖かった。
私の中の何か大切なものが、
音を立てて崩れていくようで。
「リナリーだってそうだよ。
今は教団が大切な場所なんだろうけど。
小さい頃にさらわれて、
唯一の兄と引き離され、
監禁されたんだよ?」
「知ら...なかった.....そんなこと」
ルベリエを怖がったのも、
それが関係しているのだろうか。
― 唯一の兄って...コムイさん?
どういうこと?
「イノセンスと適合者でない人間を
無理矢理適合させようとしたり。
その結果、何人死んだと思う?
ほとんどが、
エクソシストの関係者だったんだよ」
次々明かされる真実。
「何でロードはそんなに知ってるの?
教団の企業秘密でしょう?」
「信じてない?」
「いや、そういうわけじゃないけど...」
言葉を濁す。