第20章 家族
「何なの...?」
「リランはね、僕の娘なんだよ」
「は?」
「僕が産んだわけじゃないけど、
でもリランは僕の娘なの。
ずっと待ってたよ」
今まで否定してきた、全てが
壊される。
― 『ノアの娘』...私が、教団の敵?
「そんなの信じない」
「信じなくてもいいよ。
でもね、これは本当。
『僕』の血を濃く引くリランは
僕の愛する娘なんだ」
信じろと言われるより、
信じなくてもいいと言われた方が
複雑な気持ちになった。
「リランにとって本当の家族は、
僕らだよ」
そう言うロード。
私の周りにはジャスデビとティキもいる。
彼らが家族?
.......冗談じゃない。
「仲間をたくさん殺して、
不幸をばらまいているくせに。
そんな人達に家族なんて言われたら、
寒気がする!」
睨み付けたら、ロードが悲しそうに目を伏せた。
― え?
予想と違う反応に、
私は目を瞬いた。
私からそっと離れたロードは、
ため息交じりに言う。
「教団で何を吹き込まれたの?リラン」
「...吹き込まれた?
この目で見たんだよ!」
瞼の裏に甦るのは、
助けることができなかった少女達。
そして、カジム。
ううん、もっと、その前からだ。
イノセンスを手に入れたときから、
私は何人もの人が殺されるのを見た。
「アクマに?」
「そうだよ!」
「僕達じゃない」
「なっ.......」
絶句した。
怒りが込み上げる。
「直接手を下してないから何!?
アクマに命令したのはあなた達や
伯爵じゃないッ!」
憤ったまま、思ったことを
ロード達にぶつける。
「アクマだってそう!
人の命を弄んで...」
「弄んでるのは人間だよッ!」
今度はロードが大声で遮った。
口をつぐんでロードを見つめる。
「人を生き返らせたいなんて
愚かな願いでアクマを造り出す!
それは人間でしょ!?」
「それは、千年伯爵が...」
「千年公は手助けしてあげるだけだよ!
最終的に魂を引きずり下ろすのは
人間じゃん!」
「アクマになるなんて、知らないから
その希望にすがっちゃうんだよ!」
「じゃあ何で知らないの!?」
言い返せなくて黙り込んだ。