第20章 家族
~リランサイド~
「お、おい!」
声を掛けられ、私は顔をあげた。
そこにいたのはジャスデビの2人だ。
「別にクロスはてめぇのこと
嫌いじゃねーだろうから
そんな気にすんなよ!!」
ポカーン。
― え、慰められた?
唖然とした。
疑惑に満ちた視線を
じいっと2人に注ぐ。
すると、2人は真っ赤になった。
「あ、いや、お前クロスのお気に入りなんだろ?」
「はぁ.......?」
弟子なのだし、世話してくれたし、
お気に入りという言葉の意味は分からないけど
元帥が私を嫌ってないのであれば
「まあ...そういうことになる...かな?」
とりあえず肯定する。
すると、デロの方が顔の前で
手を合わせた。
「クロスに告げ口しないでくれよ、ヒッ」
「これ以上借金増やしたくねぇんだ!!」
「.......いや、別にしないけど。
(そもそも何を告げ口するの?)」
「はーいはい、馬鹿はそれくらいにしとけよ」
「てめぇ!馬鹿って言うんじゃねぇよッ!」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ、ヒッ!」
「うるさい」
馴れ合っているつもりはないのに。
このやり取りを、楽しいと思ってしまった。
「リラン、今楽しいって思った?」
傍へやってきたロードが、私にそう聞いてきた。
思わずロードの顔を見つめる。
言い当てられて、動揺していた。
「思ってなんか...」
「普通思うよね、だってリランは
僕らの家族なんだから」
「.......は?」
続けて言われた言葉に絶句する。
― 敵に、家族って...初めて言われた。
「そんなわけないでしょ!」
「会いたかったよ、僕の娘」
否定をスルーし、ロードは
私を抱き締めた。
自分より幼い少女に、娘と呼ばれて
抱き締められる。
整理できないこの状況で、
私はロードを突き飛ばせなかった。