第20章 家族
「そうそう.....俺、第3使徒『快楽』のノア。
大丈夫、殺しはしないから」
「そんなこと信じるわけないでしょ...
バカにしてるの?」
目の前のタレ目を睨み付けたら、
男は色気を感じさせる微笑を浮かべた。
目の前で見ると、かなりの容姿の持ち主だ。
「機嫌悪い?そう怒るなって。
あと、後ろのそれ、動かさないでくれるかな?
動かしたら...
腕とかもいでいい?」
― 気付かれてた...
こっそり発動してスタンバイさせておいた
槍を、見抜かれている。
至近距離だが、
目の前のノアが侮れないことは
気配で分かった。
― でも、殺るしか.......
再び発動させたとき、
今度は頭上から声が降ってきた。
「おいおい、なぁに手こずってんだよ!」
「手伝ってやろうか?ヒッ」
「.......お前ら、何でいんだよ」
ティキが上を見上げ、
呆れたように言う。
私も見上げようとした瞬間、
左右のこめかみに硬い物が押し付けられた。
体が固まる。
「大人しくしてろよ」
「大人しくしてないと撃っちゃうよ?ヒッ」
横目でそれぞれ確認すると、
派手な格好をした2人組がいた。
それぞれ黒髪と金髪の男。
...ティキの口ぶりからして、
彼らもノアだろう。
黒い肌と聖痕を見て、
唇を噛み締めた。
― 絶体絶命。
まさにそんな状況だ。
背後は壁、前にはティキ、左右には
もう2人のノア。
― アレン、ラビ、リナリー.......
助けて!!!!
叫ぼうとした瞬間、
ティキによって口を塞がれた。
「あ~、静かにしててくれ。
少年呼ばれるとちょっと困るんだよ」
「少年ってまさかクロスの弟子かよ!?」
「あいついたんだね、ヒッ」
私は発動を諦めた。
でも、倒すことを諦めたわけではない。
― 隙を見て、必ず.......
「アレンを知ってるの?
というか、あなたたち誰?」
隙を作らせる為に、
ティキの手を口から外して聞いた。
「オレは第10使徒『絆』のデビット様だッ!」
「僕は第11使徒『絆』のジャスデロだよッ!ヒッ」
「「2人合わせてジャスデビだ!!」」
決めセリフなのだろう。
ムダにカッコつけている。
― 左の黒髪がデビット、右の金髪がジャスデロか.......