第20章 家族
~リランサイド~
それから2日後。
私は、任務に出ていた。
同行しているのは、アレン、ラビ、リナリー。
大して重要な任務ではないのに
4人で来ているのは、
コムイさんの余計な気遣いだろう。
あれから、誰ともまともに口をきいていない。
部屋に籠っているのは気が滅入るから、
気分転換に任務がしたいと言っただけだ。
みんな、私に気を使っているのが分かる。
まるで腫れ物に触るような扱いだ。
「...早く帰りたい」
いや、帰ってもまたあの悪口に晒されるだけだ。
― いっそ逃げ出そうかな...
ため息をつく。
今は1人だった。
3人は、それぞれ買い物だったり
トイレだったりと、
バラバラに行動している。
私は1人になりたくて
建物の裏側で、
壁に寄りかかって立っていた。
待ち合わせの時間には戻るつもりだ。
その時、
「お嬢さん、今1人?」
軽そうな声が聞こえた。
横を向くと、シルクハットを被った
スーツの男が笑みを浮かべて立っていた。
「3人ばかり連れがいるけど、
確かに今は1人よ」
「じゃあ、俺と楽しいとこ行かない?
その連れが戻ってくる前に、さ」
「お断りします」
今は気分が悪いのだ。
にべもなく言い放つと、
男は肩をすくめた。
「そんなつれないこと言わないでさ~。
俺、1人でつまんないんだ」
「知りません」
そっぽ向くと、男が苦笑する。
「しょーがないなぁ...じゃあ、力づくで」
「どういう.......っ!?」
物騒な言葉に眉をひそめた瞬間、
目の前に男がいた。
ダンッ
壁に押し付けられる。
「あなた...まさか!?」
「初めまして、お嬢さん♪
俺ティキ。お嬢さんは...リラン、だっけ?」
「ノア.......!!!!」
肌の色が黒くなり、額に聖痕が浮かび上がる。
ニヤリと笑った男は、ふてぶてしく
それを肯定してみせた。