第19章 過去のトラウマ
「お前、もう一度私の奴隷になりなさい」
子爵の言葉は、
司令室で不穏に響いた。
「やだ.......嫌!」
掴み上げられている
襟を離させようと暴れた。
「ふん」
ドサッ
「うっ.......」
床に落とされ、微かに呻く。
「見返りは、今までの投資の倍額払うことだ。
悪い話ではあるまい?
もう一度壊れれば良い話だ」
見かねたラビが、私を助け起こしてくれた。
コムイさんも立ちはだかる。
「申し訳ありませんが、
彼女は教団にとっても我々にとっても
大事な存在です。
差し出すわけにはいきません」
「私は倍額払うと言ってるのに...。
投資を止めてもいいのかね?
教団は、あまり私の納得いく
成果をあげておられないからねぇ.......」
目に見えて、コムイさんが怯んだ。
― そんなに、子爵の投資は重要なんだ.......。
諦める。
もう一度、耐えれば良い話だ。
― でも.......
恐怖が襲いかかった。
思い出すだけで
寒気が止まらない。
肩にかかったラビの手に、
力がこもった。
子爵が近付いて来ている。
私は、そっとラビから離れた。
驚愕の気配が伝わってくるラビに、
心の中で謝る。
「さあ.......」
差し伸べられる子爵の腕に、
抱かれようとした時だった。