第19章 過去のトラウマ
司令室へ向かう途中、
ラビは感慨深そうに呟いた。
「光と闇か...二面性?」
「ああ、それ?ごめん、
無茶苦茶だったよね」
少しの間、黙考して考えをまとめる。
「つまり、ラビは太陽みたいに
明るい人なのに、
何故か深い闇を持ってるような
気がするってこと。
時々、ラビが別人に見えることがあるからさ。
それが少し怖い」
「...それ、普通本人に言う?」
呆れたような声に、
私は慌てて手を振った。
「あ、いやっ、気分悪くした?ごめんっ!
とりあえず、思ったことを言おうと
思って...意味わかんないだろうけど」
「うん、ぜんっぜん分かんない。
でも、それがリランの世界なんだろ?
俺、なんか特別な気ぃするし、
気分悪くしてねーよ」
ほっとした。
私の世界は抽象的すぎて、
言葉で説明するのは難しいのだ。
― とは言っても、世界なんて呼べるものかは
わかんないけど。
そもそも、世界とは何だろう...と
考え出した矢先、
私達はいつの間にか科学班フロアに着いていた。
「んー?あ、リナリー!
ちょうど良かった!」
「しーっ!大声出しちゃだめ!」
「へ?」
リナリーを呼んだら、
彼女は慌てたようにこちらへ
駆けてきた。
「どうしたの?」
聞くと、リナリーは困ったような顔で
司令室の方を見やった。
「実は、重要なサポーターの人が
突然押し掛けて来て...。
よく分からないけど、
兄さんとずっと話してるの」
「サポーターが、教団本部に?」
ラビが意外そうに問い返す。
確かに、教団でサポーターに会ったことはない。
「そう。重要な話みたいだから、
コーヒーを持っていくタイミングが
分からなくて.......」
悩ましそうにため息を吐くリナリーに、
私はそっと声を掛けた。
「リナリー、そのコーヒー....
もう冷めてるよ」
「えっ!?淹れ直さなきゃ!」
しっかりしてそうで、案外
天然なところがあるのかもしれない。
するとリナリーが向こうへ駆けていった直後に、
司令室のドアが開いた。