第19章 過去のトラウマ
~リランサイド~
体がゆらゆら揺れていた。
まるで、1年前の再現のようだ。
― おじさん.......?
懐かしさを覚えて、
抱えてくれている人の肩に
頭をすり寄せた。
でも、違う。
元帥とは違う、洗剤の香りがする。
― おじさんはタバコの匂いがしてた。
あなた、誰.......?
薄く目を開いて顔をあげると、
見慣れた顔がすぐ近くにあった。
「ラビ.......?」
無表情だったラビが
首を曲げて私を見ると、
少し顔を緩めた。
「ここどこ...」
「今、アジア支部から本部に戻ってきたとこさ。
よく眠れた?」
「ああ、そっか.......うん、よく寝れた」
普通に返事してから、
少しずつ状況を理解する。
― いや、ちょっと待って、
私今まで寝てたってことは...
ラビに寝顔見られてた!?
ていうか今、ラビにお姫様だっこで
運ばれてる状態だよね!?
「ラ、ラビ!ありがと、もういいから下ろして!」
「え~何でさ?別に気にすんなさ~、
疲れてんだろ?」
「いや、本当にいいって!」
「大丈夫大丈夫」
私を気遣うように言ってるけど、
ふざけた口調はどう考えても
嫌がらせだ。
「もう下ろしてってば!
さっきのこと、まだ許したわけ
じゃないんだからね!」
途端、情けない顔になったラビは
大人しく下ろしてくれた。
「さっきのは誤解さ.......
無理してないか、って言ったつもりだったんさ。
傷つけるつもり全然無くて....ごめんなさい」
「ああ、そういうことだったんだ。
こっちこそごめん、
本気で叩いちゃった。
腫れてない?」
「いや、じじいの一発に比べれば
全然へーきさ。
あれは叩かれてもしょうがないと思ったし。
アレンにも怒られたし」
「アレン?」
「うん」
並んで歩く。
気まずくはないが、
話題が途切れて静かになった。
「そういえばさ」
「ん?」
ラビが、神妙な面持ちで
切り出した。