第19章 過去のトラウマ
「おーい、リラン!いるかー?」
ひょこっと広間を覗くと、
フォーが顔をあげた。
隣には、リランが座っている。
「お前、確か...ラビ、だよな?」
「ん?俺?うん、ラビさ。
リラン迎えに来たんだけど...
ぐっすり寝てんなぁ~」
フォーも、困ったように
リランを見下ろした。
「こいつ、泣きながら眠っちゃったんだ。
事情よく分かんねーけど、
かなり辛いんだろうな」
「泣いてた?」
「ああ。自分は必要ないの?、ってな」
フォーの言葉に、俺は眉をしかめた。
― 必要ない...いらない子。
リランが売られたのは、
そもそもそのせいだったよな.......
詳しくは分からないが、
リランが小さい頃に邪魔者扱い
されていたのは知っている。
その結果、唯一必要とされた体を
売ることしか出来なかったことも。
「何でもするから捨てないでって、
こいつ昔に何かあったのか?」
「.......俺からは言えねぇからさ。
とりあえず、リランは俺が連れて帰るさ。
ありがとな」
フォーの手を握り締めていた
リランの手をそっと外し、
俺はリランを抱き上げる。
「じゃ」
目線で挨拶し立ち去ろうとした俺を、
フォーが呼び止めた。
「なあ。そいつ、あんま無理させんなよ」
振り返ると、もう守り神の少女の姿は無かった。