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孤独を無くしたい 【D.Gray-man】

第18章 歌姫


コムイさんが、自分を落ち着かせるように
頭に手を当てる。

「しかし...歌姫は不規則に生まれると
 言いましたよね?
 どうして歌姫が現れたと分かるんですか?」

「企業秘密じゃ。というよりも、
 そう記録として残っておるだけで
 ワシにも分からぬのじゃ。
 リラン嬢には、全く覚えのない
 唄だったのであろう?」

肩をすくめたブックマンの
黒い瞳が、私に向いた。

「はい、全く覚えがないんです。
 というか....歌っていた時の記憶が曖昧で。
 でも...唄だけは今も頭に残ってます。
 懐かしい、そう、とても懐かしい
 感じがしました」

アレンのピアノを聞いたとき、
私の胸に沸き上がった
知らない感情。
あれはきっと...郷愁だったのだろう。


― なぜ?



私には、懐かしく
思い出すことができるのは
リーレノと暮らしていたあの村だけだ。

...微かに、胸が疼いた。

私にとって本当の家族は...
きっと、ずっとリーレノだけだ。
こんなに一緒に過ごして、
命を助けて貰ったことさえあるのに、
みんなを信じきれない私がいた。


「記憶のない10歳までに
 馴染み深かったのか...。
 それとも、ノアのように記憶を受け継ぐのか?
 貴重な記録じゃ...」

ブックマンはぶつぶつと呟く。
私はその様子を見て、
一気に不安になった。

「私は...人間ですよね?」

思わず口をついたのは、
そんな言葉だった。
ロードの血を濃く引く人間。
最初の、ロードの血を。

ノアを、到底人間だと思えなかった。
人間はみなノアの血を引いているけど、
その中で『特別』にロードの血を
引く私は一体....


「てめぇは死なねぇのか?」

「は?」

神田が私を真っ直ぐ見ていた。

「死なねぇなら化け物だな。
 死ぬんなら人間だ。
 試してみるか?」

乱暴で物騒なセリフだ。
でも、何故か安堵を感じた。

「や...死ぬと思うから遠慮する。」

首を振ると、神田は元のように
ドアに寄りかかって目を伏せた。

「なら、人間だな」

励ますというか、
神田なりの気遣いに感じる。


― そっか、死ぬなら人か...


本当に乱暴な分け方だ。
口元に浮かんだ笑みを、
俯いて隠した。


「話を戻しましょう!」

アレンが手を叩き、
私は頭を整理して
ブックマンを見つめた。

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