第18章 歌姫
「今回のことで確信を持ったのは、
リラン嬢が歌姫であるということじゃ」
「歌姫?」
私が聞き返す。
「うむ。しかし、歌姫については
ワシですら記録はとても少ない」
「良いですから。教えてください、
歌姫とは何ですか?」
まどろっこしいブックマンの語り口調に
私は微かに苛立ちながら言った。
「歌姫とは、方舟の奏者と対になる存在、
といっても過言ではない。
この場合はアレン・ウォーカーじゃな。
奏者の奏でる音色と歌姫の唄、
2つが1つになったとき....
世界に変化が訪れるという」
「変化?」
「それは分からぬ。
今まで、歌姫と奏者が同時に
現れたことは一度も無いのじゃ」
ブックマンの言葉を慎重に聞き、
微妙に答えになっていないことに
気付いた。
「ブックマン。そうじゃないんです。
そうじゃなくて......。
歌姫とは、“そもそも”何者何ですか」
私の聞きたいことを、
正確に分かったのはブックマンと
ラビ、コムイさんくらいだろうか。
― 私は、何者なの?
「ふむ.......。」
ブックマンが数秒間、考え込んだ。
「...歌姫は、不規則に突然現れる。
歌姫として生まれるのじゃ。
ノアのように覚醒するわけではない。
そして、歌姫は...とあるノアの血を濃く
引いて生まれる」
「とある、ノア...??」
ブックマンは、もう私に向かって
話をしている。
「会ったことあるじゃろう?
ロードじゃ。第9使徒、夢のノア」
「「「「なっ!?」」」」
ブックマンの衝撃の一言に、
全員の声が重なった。
私は、思わず立ち上がりかけて
アレンに押さえられる。
「リラン!お、落ち着いて!」
何の制止か分からない声を
あげたところを見ると、
アレンも動揺しているんだろう。
みんなが狼狽えた顔で私を見た。
― ここで私も動揺したら、
みんなが落ち着かない。
深呼吸、深呼吸...。
大きく息を吸って、私は
ソファーに座り直した。