第17章 ノアの方舟
アレンは、リランの頼みで
ピアノを弾き出した。
頭の中で、同じメロディーが
流れている。
アレンが目を上げて
リランの様子を窺ったとき、
彼女の様子がおかしいことに気付いた。
ソファーから立ち上がり、
胸で手を組んで
目を閉じている。
「リラン.......??」
声を掛けた直後だった。
「そして坊やは眠りについた...
息づく灰の中の炎.......
ひとつ...ふたつと...
浮かぶふくらみ愛しい横顔...♪」
「リラン!?どうして!?」
メロディーに合わせて、
リランが歌っていた。
その歌詞は、今アレンの
目の前に開かれている
歌詞そのままだった。
驚いて手を止めようとしたアレンは、
それが出来ないことを知った。
「くそっ、どうなってるんだ!?
止まってくれ...止まれ!!」
「銀の瞳の揺らぐ夜に...
生まれ落ちた輝くお前...♪」
そのとき、突然方舟が揺れた。
グワンッ
そのまま地震のように
揺れ続ける。
「うわぁぁぁ!?」
アレンは転びかけたのに、
ピアノを弾く手は止まらない。
リランは、よろめきもしなかった。
そのとき、アレンのイヤリング型の
無線機に通信が入った。
「アレンくん!!無事かい!?」
「コムイさん!全然無事じゃないです!」
「どこにいるんだ!?な...って!?
アレンくん、リランは一緒かい!?」
聞き取れなかったところは、
多分誰かへの反応だろう。
「そのリランが大変なんです!!
僕ら今、方舟にいます!
この大きな地震も、多分
僕らが原因です!」
「よし、それじゃ...ってラビ!!
待つんだ!リナリーまで!!
今2人が向かったから、
それまで頑張ってくれ!!」
「はい!!」
どんどん酷くなる揺れは、
立っているのが精一杯なほどだ。
アレンは、手を止めることに
意識を集中した。