第16章 日常
そして、そのまま口に放り込もうとして
後ろから伸びてきた手に
クッキーを奪われた。
「え?」
「美味しそうですね!
ジェリーさんのクッキーですか?
ん~、美味しい!」
「「あーーーーー!!!!」」
「アレンくん!?」
突然現れたアレンが、
モグモグとクッキーを食べてしまった。
数秒、病室にアレンが
食べる音のみ響く。
「え?」
ゴクン、と飲み込んだアレンが
状況を理解できないのか
全員の顔を見回す。
「プッ...フフフ、アハハハハハ!」
つい、笑ってしまった。
きょとんとしたアレンと、
落ち込むラビが面白かったのだ。
「フフフフフ」
「...ブハッ...アハハハ」
リナリーも笑い出し、
ラビも吹き出す。
その様子に、状況が分からないなりに
アレンも笑い出した。
「アハハハハハハハ!」
私は滲んできた涙を
拭きながら、師匠に言われた
言葉を思い出した。
― 笑える...笑えてる。
毎日、こうやって誰かと笑い合う。
そんな日々を、ずっと夢見てた。
酷いケガはしたけど。
それも気にならないくらい
今は嬉しかった。
私が泣いているのに気付いたのか、
リナリーの手が私の手に重なった。
続いて、ラビとアレンの手も。
「ありがとう...。
あの時、私を助けてくれて.......。」
「リラン...」
リナリーが椅子から腰を浮かせて、
私の頭をぎゅっと抱きしめた。
「...こちらこそ、生きててくれて
ありがとうさ」
ラビが、私にだけ聞こえるように
そう言ってくれた。
泣き止んだ私は、顔を上げてアレンを見た。
「アレン...そういえば、いきなり
病室に飛び込んできたように
見えたんだけど...どうしたの?」
アレンは、私の手を離すと
頬をかきかき視線を泳がせた。
「いやぁ~...その.......」
バッターン!
「アレン・ウォーカー!!
ここにいたんですね!?」
物凄い勢いでドアが開かれ、
知らない金髪の男性がツカツカ入ってきた。
ぴしっとした服装で、まるで
どこかの官吏のようだ。
「リンク!ここは病室ですよ!」
「話をはぐらかさないで
頂きたい!!」
男性は相当イラついている。