第16章 日常
神田が出ていった直後、
「うおっ!?ユウ!?」
と声が聞こえた。
ラビだろう。
神田に驚いたらしい。
私はリナリーと顔を見合せて
クスクス笑った。
「なあリラン!今ユウがっ...!」
勢い良く入ってきたラビは、
リナリーを見るなり
納得したような顔をした。
「ああ、リナリーが連れてきたんさ?
ユウが見舞いなんて珍しいと思ったさー。
しかも、かなり機嫌良くね?」
「へ?」
ラビの言葉に驚く。
「だって、オレがユウって呼んでも
怒らんかったもん」
得意げな顔をして、胸を張るラビ。
「ラビ...いつもそうやって
神田の機嫌を測るの?」
「何で?測んなくても分かるさー。
あのユウだからな」
今度は逆に不思議そうな顔で
言ってきた。
「あー...うん、まぁ分かったよ」
微妙に噛み合っていない
会話に苦笑しつつ、
リナリーを見る。
「リナリー、そういえば、
そのバスケットなに?」
「あ、これ?ジェリーさんに渡されたの。
お見舞いですって!
中身は特製クッキーらしいわ」
「クッキー!?オレも食べるさー!」
リナリーが膝に乗せた
バスケットに、ラビが飛び付いた。
リナリーがナプキンを取ると、
中には香ばしく焼けた
色とりどりのクッキーが入っていた。
「「「うわぁ~~~♡♡」」」
全員の目がハートになる。
よだれが出そうになるほど、
クッキーは美味しそうだ。
それぞれ違うクッキーを手に取り、
「「「いただきまーす!」」」
パク。
サクサクした食感に
ほんのりとカカオが香る。
バターの甘さが口いっぱいに広がって――
「おいし~~~~♡♡」
頬っぺたが落ちそうになった。
「これヤバいさぁ~~♪
美味すぎ!!美味すぎるさ!!」
「さすがジェリーさんね♪」
次々食べていく。
と、手がラビと当たった。
「む」
最後の一枚。
ラビをじぃっと見つめた。
「な、なんだよ...」
私に譲れ~と視線に思いを込めた。
「う~~~~.......」
追い詰められたラビが、
呻きながら悶々としている。
「は.......」
「は?」
「早い者勝ちさ~~!!!!」
叫ぶなり、クッキーをバッと掴む。