第16章 日常
起きたら、次の日の朝だった。
あれから、クロウリーやミランダも
見舞いに来てくれて、
あまり寂しさは感じ無かった。
あと体の方は
吐き気や頭痛は大分収まり、
あとは傷の治りを待つだけだ。
私は婦長の持ってきてくれた
昼御飯を食べた後、
また布団に潜り込んだ。
そろそろ誰かが訪ねにくる
時間だ。
コンコンコン...
予想通り、ドアがノックされた。
「リラン!私よ!」
リナリーだ。
「リナリー...どうぞ...」
わざと弱々しい声を出してみた。
布団に潜り込んだまま
様子を窺う。
「リラン、どうしたの?
具合悪い??」
ナプキンで包んだ
バスケットを手にしたリナリーが、
慌てた様子で入ってきた。
「早く入ってきて!」
外に声をかけ、枕元の低い棚に
バスケットを置いて
足元にあった椅子を
横に持ってきて座る。
「大丈夫?」
心配げなリナリーの様子に、
内心ほくそ笑みながら
「うん.......」
と答える。
すると、
「おい、具合良くなったんじゃねーのかよ?」
無愛想な声。
私は思わぬ人物の登場に
跳ね起きた。
「なんっ...うぅ...」
声をあげかけて、
傷の痛みに呻く。
「あら、元気じゃない」
リナリーがホッとしたように
のほほんと言った。
「神田.......」
呟くと、リナリーがニコニコ
笑った。
「私にリランの様子を聞いてきたから、
お見舞いすればって
連れてきたのよ。
神田だって心配してたんだから」
意外に思う。
― 私のこと、仲間...
家族と思ってくれてるのかな?
そう思ったら、とても嬉しくなった。
「別に...元気ならそれで良いんだよ」
神田はふてくされたような
口調で言うと、
回れ右して病室を出ていこうとする。
「あ、待って!」
慌てて声をかけると、
神田は肩ごしに顔だけ振り返った。
「ありがとう、心配してくれて」
「ふん」
微笑むと、神田は満更でもなさそうに
鼻を鳴らして、今度こそ
本当に病室から出ていった。