第16章 日常
「アレン達呼んでくるさ。
大人しく寝てろよー」
私の頭を一回ポンと叩いて、
ラビが出ていった。
しばらくじっとしていたら、
複数の足音が近付いてきた。
バンッ!
「リラン!気がついたんだね、
良かった!!」
「もう、心配したのよ!」
アレンとリナリーだ。
私は、大声を出されて
頭がひどくガンガンした。
「アクマに斬られたところは!?」
「もう大丈夫なの!?」
― やめて.......頭に...
頭に響く.......!
静かにして、と口を開けた瞬間、
猛烈な吐き気に襲われた。
咄嗟に、体の痛みは気にならないくらいの
勢いで跳ね起きる。
「うっ.......」
手で口を押さえ、
必死に吐き気を押さえ込んだ。
跳ね起きたせいで
全身が痛いし、頭痛はさらに酷くなって
涙が出てきた。
「うっ.......ふ...」
吐き気と嗚咽、両方を我慢していたら、
背中を温かい手でさすられた。
「リラン、ごめんなさい。
私達が騒がしくしたせいね」
「僕、婦長を呼んできます」
「婦長ならオレが呼んできたさ、アレン」
リナリーが気遣う口調と手で
優しく背中を撫でてくれた。
「はいはい、エクソシスト方。
出ていってくださいな!
女性の着替えを覗くおつもり?」
婦長が、小さめのボリュームで
アレン達をどやしつけ、
部屋から追い出した。
私の様子を見て、すっと
洗面器を差し出してくれる。
「我慢しないで吐きなさい。
今よりは気分良くなるわよ」
「ありがとう.......」
「何言ってるの。
治療するのが私の仕事よ」
婦長は、汗で湿った患者服を
テキパキ着替えさせてくれた。
そのときやっと視界がはっきり
して、自分の様子が分かった。
足と腕、手には無数のガーゼや
絆創膏が貼られ、
部分的に包帯も巻かれている。
頭にも包帯が巻かれているようだ。
服を脱いだときに見た体は、
包帯でぐるぐる巻きにされて
まるでミイラだ。