第16章 日常
ふと、人の気配を感じて
私はすぐに目を開けた。
しかし、焦点が定まらなくて
気持ち悪くなりそうになる。
仕方なくまた目を閉じた。
「誰...?」
状況が掴めずに、警戒しながら問う。
声はかすれて、消えそうなくらい
小さい声しか出なかった。
「起きたんさ?」
独特なしゃべり方で、すぐ
ラビだと分かった。
私はホッと安堵を感じた。
寝言だと思ったのか、
ラビは小声で確認するような
感じで聞いている。
「喉痛い...水ちょうだい」
「え、本当に起きたんさ?
ちょっと待つさー、
今持ってってやるからな」
さっきより大きめの声で言うと、
ラビは驚いた声を出した。
トポポ...と水音がして、
ラビの気配が近付く。
「起きれるか?」
「うん」
もう一度目を開けて
ぐいっと体を起こそうとしたら、
目眩と同時に全身を痛みが襲った。
「うっ.....」
「っと、大丈夫さ?気分は?」
「最悪...全身痛い」
倒れかけた体をラビに支えてもらい、
なんとか上半身を起こして
私は呻いた。
「あ"ーもう、何コレ。
吐きそう。」
「えっ!?吐かないでくれよー、
頼むから!」
「大丈夫。ベッドの心配はしないで。
ラビの服を受け皿にするから。」
「いや、むしろそっちの心配だったさー...
て、そんだけ喋れんなら
大丈夫だろー」
「いや...むしろ軽口でも叩かないと
やってらんないくらい
気分悪い。全然大丈夫じゃない」
頭を押さえて目を閉じる。
視界がボヤボヤして
酔いそうだ。
手探りでラビの持つコップを
受け取ると、一気に飲み干して
息をついた。
カラカラの喉を冷たい水が
滑り落ちていく感覚を
心地よく感じながら、
さっきまで見ていたはずの
夢を思いだそうとした。
― .....なんか、すごく嫌な夢だったのは
覚えてるのに...。
思い出せないや。
思考を放棄して、
またベッドに横たわる。
「私、何でこんなことになってんの...?」
「え?思い出せないんさ?」
「あ~.....いや、
今思い出してきた。」
アクマと戦ってて、
斬られたはずだ。
しっかり見れないから
分からないが、きっと包帯とか
すごいんだろう。