第13章 新たな任務
オレはゆっくりと目を開いた。
暗闇が彼方へ退いていく。
オレがいるのは、教団の廊下だった。
とある部屋の前でブックマンを待っていて、
久しぶりにこの問いを
自分にして、感情を空にしていた。
しかし、せっかく感情を
整理したばかりなのに、
オレの感情を乱す存在が
目の前にいて狼狽えた。
「リラン?何してるんさ?」
動揺で声が揺れないように
早口で喋る。
リランはオレの前で
膝に手をつき、オレの顔を
間近で見上げていた。
「ラビが、珍しく不機嫌そうというか、
無表情だったから気になって」
心配げな顔をして、
オレの頭に手を伸ばしてくる。
後ろに下がって避けようとしたが、
あいにく壁に寄りかかった状態なので
無理だった。
「今日は、髪を下ろしてるんだね」
リランがオレの前髪に触れ、
軽くかきあげる。
じっと瞳を覗き込まれて、
気恥ずかしくなったオレは視線を
リランの体にスライドした。
「コートに荷物...てことは任務?」
黒いコートに身を包み、
少ないが荷物のケースを持っている。
オレが聞くと、リランはにっこり頷いた。
「今日は、リナリーと初めての任務なの」
リナリーと任務に行けることが
よほど嬉しいらしい。
頬がめちゃくちゃ緩んでいる。
「じゃあ、そろそろ行った方が
良いと思うけど?」
― そろそろ、この変な状態から
抜け出したいさ.......。
壁に寄りかかり、目の前に
リランがいて髪を触られている。
「あ、そうだねー」
リランは髪から手を離す前に
ちょいちょいっと前髪を
直してから離した。
一歩離れて、また微笑む。
「行ってきます」
その仕草と笑顔にくすぐったい
感情を覚えながら、
オレも笑い返した。
「いってら」
ひらひら手を振って見送る。
リランの姿が廊下の奥に消えたとき、
ついため息がこぼれた。
― こんなんじゃ...本当にダメさ。
その時、部屋のドアが開いた。
「ラビ」
自分の名を呼ぶ声に振り返る。
「じじい」
「何じゃ」
「いや...何でもない」
この気持ちは、自分の中で
整理しようと決めた。